ケース5 裁判・強制執行

【事例】

マンション管理会社のA社担当者は、3ヶ月家賃を滞納しているFが電話に出ないことから、住んでいるマンションの一室を訪問した。するとマンションの郵便受けには数週間分の郵便物があふれており、人の気配がなかった。

A社担当者は、時間を変えて何度か訪問してみたがFはいつもおらず、ドアに目立たないようにシールを張っておいたものの、出入りした様子もない。
A社担当者は、合鍵で部屋の中をのぞいてみた。
すると中にまだ荷物はあったものの、ほとんど持ち出されており、明らかに夜逃げの状態であった。

【顧問弁護士なし】

A社担当者はすぐに社に帰り、上司と相談しました。
A社の営業エリアは同業他社との競合が激しく、家賃回収が滞っている上に夜逃げをされたとあっては、オーナーが他社に乗り換える可能性があります。

A社はすぐに、オーナーに事情を説明して、A社の負担でFのマンションの鍵を交換し、ハウスクリーニングを入れ、新規の募集を始めました。

ところがそれからしばらくして、A社に対し裁判所から訴状が届きました。
Fが「A社は無断で貸室に立ち入った上、私物を処分し、鍵を変えて立ち入れないようにした」として損害賠償を請求してきたのです。

またFが警察に住居侵入の被害届を提出したため、A社担当者は取調べを受けることになりました。
A社は「Fには3ヶ月分の滞納家賃があり、また原状回復費用も負担する義務がある。私物を処分したと言っても、財産的価値のあるものは何もなかった」として裁判で争いましたが、Fの請求を認める判決が下されました。

【顧問弁護士あり】

A社担当者は、Fの部屋を確認した後、上司と相談し、すぐに顧問弁護士に連絡を入れました。
鍵を変えてハウスクリーニングを行ってよいかというA社に対し、顧問弁護士は「それは自力救済ですからあとになって賠償請求を受ける危険もありますし、刑事事件になる危険もありますよ。適切に裁判を行い、強制執行によって明渡を受ければ、そのような危険はありません。」とアドバイスしました。

法律上、家賃滞納による契約の解除と立退きは、裁判で判決を得て強制執行により実現するという手続が定められています。法的手続を無視して結果を自力で実現する行為は、法律による保護を受けられません。

裁判費用、強制執行費用も決して安くはありませんが、事業経費に計上することができます。顧問弁護士は、A社が受ける可能性のある賠償請求の負担や、A社担当者にかかる刑事責任の危険、そしてA社の社会的信用への影響を考えて法的手続によることを選択したのでした。

【コメント】

賃貸借契約における明渡処理も、その間滞納地代・滞納家賃がかさんでいくことを考えると、迅速性が要求される手続です。

賃貸借契約の解除を行うには、事前に滞納分の支払いを催告しなければならないなど、法的な手続が要求されており、そのための猶予期間も確保しなければなりませんから、滞納がかさんでから準備に取り掛かっていたのでは損害が膨らむばかりです。

こうした迅速な処理が要求されるトラブルこそ顧問弁護士が適しており、「なんだかあぶないな」「以前にも滞納をしているし、今度は払われないかもしれない」など、担当者レベルの感触で顧問弁護士に相談しておけば、損害を最小限に食い止めることができるでしょう。


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