こんにちは。
みなさんは”田舎”をお持ちでしょうか。
私の田舎は岐阜の山奥にあり,そこには祖父母の家のほか,祖母の祖母の家(祖母の母親の実家?)があります。
祖母の祖母の家はすでに無人となっており,廃屋同然(というよりも廃屋そのもの)なのですが,私が子どものころはこの家はたいそう素敵な家でした。
玄関扉をくぐると中は土間になっており,そのまま奥の台所へと続いています。台所にはおおきな釜戸があり,薪で煮炊きをしていました。
柱や梁には黒々と光る太い材木が使われており,家の中にツバメがいくつも巣をかけていました。
板敷の縁側では,竹を編んで作った大きな鳥かごで祖父(私の祖母の父?)が野鳥を飼っていました(たぶん違法)。
土と,木でできた家。きちんと手入れすれば,何十年でも傷みはしない。
それに比べて最近の建物ってなんでこんなに傷みやすくて,不細工なんでしょう。
仕事柄,不動産の価値を検討する機会は多いですが,「築何年ですか?30年?じゃあ敷地だけの評価ですね」などと会話するたびに,バカげた話だなあと思います。
どうして住宅ローンを払い終わったら価値のない建物になってしまうんでしょう。
どうして買ったとたんに評価が下がっていくんでしょう。
20年たったら今より高くなる。
30年たったら買うのにひと財産いる。そんな風にはならないものか?
そんなことを常々考えていたところ,最近気になる話題が二つありました。
1つ目はアレックス・カー氏の話。
この方はアメリカ人ですが,徳島県の祖谷という地区に感銘を受けて,同地区内にある古民家を現代の設備を整えた状態に再生し,宿泊施設として稼働させています。
古民家が再生されることも素晴らしいのですが,それが実際の使用に耐えるように整備されている点に加え,宿泊施設として稼働させることで地域経済に大きく貢献しているという点が本当に素敵だと思いました。古い建物が,ただ美観としてではなく,実用性と経済的価値を備えたものとなれば,建物を大事に,長く使おうというムーブメントにつながっていけるはずです。
2つ目は国土交通省が優良な中古住宅に認定を与える制度を作るというニュース。
不動産業界と提携して中古住宅のデータベース化も進めるようです。
中古住宅が買い手に安心感を与える商品になれば,流通も進みます。流動化の高い商品となれば,評価額も向上しますし,中古になっても評価の高い建物を建てようという流れが生まれるかもしれません。
昔イギリスに行ったとき,築200年の建物が普通にアパートメントとして使用されていることに,今でも忘れられないほど衝撃を受けました。
なんてカッコいい!日本もこうだったらいいのに!
使い込まれた物の美しさ,作り込まれた物の美しさがもっと高く評価されれば,この国はもっと素敵になると思うんですが。
2012/11/13