A社と長年取引のあるD社は、最近大幅に業績が悪化していると噂である。
D社から注文を受けたA社担当者は、D社の社長に面談し、まだ残っている売掛金の支払は大丈夫かどうか確認した。
D社長は「2週間後に売掛金が入ってくる。それが入ったらすぐに支払いますから仕入れをさせてください」と懇願しました。
手元には全く現金がなさそうだったので、A社担当者は迷いましたが、D社長に2週間後に一括で支払うことを誓約する書面を書かせた上で商品を納入しました。
ところが2週間後、A社担当者がD社を訪問すると、事務所は封鎖されており、破産管財人による立ち入り禁止の貼り紙がなされていました。
倉庫にはA社の納入した商品が保管されているはずですが、立ち入れば刑事罰に問われかねません。
D社はひそかに破産の準備を進めており、A社に支払われるはずだった売掛金で破産手続費用を賄ったのでした。
D社長から「2週間後に支払われる売掛金から支払う」と懇願されたA社担当者は、顧問弁護士から連絡させると言い置いて、すぐに顧問弁護士に連絡しました。
顧問弁護士「売掛金を支払ってくる取引先はきちんとした会社ですか?D社との付き合いは長いんでしょうか?」
A社担当者「ちゃんとした会社ですけど、単発の取引みたいです」
顧問弁護士「D社は在庫はないんですか?在庫を売ることはできるでしょうか?」
A社担当者「在庫は常時ありますし、売ろうと思えばすぐに売れると思いますけど、売ったら倒産しますよ」
顧問弁護士は、A社担当者と相談の結果、在庫を集合動産譲渡担保に入れるか、売掛金債権を債権譲渡するか、どちらかの方法で債権を保全することにし、D社と交渉しました。
その結果、D社の倉庫に保管されていた在庫商品を集合動産譲渡担保に取ることになりました。
2週間後、A社担当者がD社を訪問すると、事務所は封鎖されており、破産管財人による立ち入り禁止の貼り紙がなされていました。
他の債権者たちも押しかけてきて、D社長の行方や、自分たちの債権について言い合っていましたが、A社担当者はすぐに顧問弁護士に連絡を入れました。
顧問弁護士は、その連絡を受けてすぐに破産管財人に通知し、担保に入れていた在庫の引き上げ日程を調整しました。
その結果、A社は在庫商品の売却処分によって売掛金の大半を回収することができたのです。
債権回収はスピードが要求されます。取引先の事実上倒産の一報が入ってから弁護士を探していたのでは到底間に合いません。
回収先に現預金はないのが普通ですし、現金化して回収できる財産は何があるのか、業種によっても様々です。こうした業種ごとの特殊事情を、日ごろから把握している顧問弁護士こそ、債権回収に威力を発揮します。
※コンテンツ内で事例をご紹介する場合、作成当時の法律に基づきますので最新の判例と異なる可能性があります
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