「インターネットで世界はどんどん狭くなっている」と人はいう。
でも世界はどんどん狭くなる代わりに、どんどん深くなっている。
私は世界の表層に浮かんで、底の方はどうなっているんだろうと考えてみたりする。
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「ではご契約手続を進めて参りますね!」ショップ店員は明るく説明を始めました。
「まずはおすすめパック!人気コンテンツが使い放題、写真や動画も保存できます!」
「次は安心パック!スマホを紛失しても大丈夫。ウィルス対策も万全です!」
「さらに映画が見放題!音楽聞き放題!漫画が読み放題!アニメが見放題!グルメ情報が見放題!大幅割引で機種変更し放題!今なら1か月ぜーんぶ無料です!!」
「お尋ねしますが、1か月が過ぎたらどうなるのでしょう?」
「1か月後からはそれぞれ有料となっております!」
「それなら特に必要ないものばかりなので、お気持ちだけ頂いておきます。」
「申し訳ございません。無料サービスですので、ご不用でしたら後日ご解約ください!」
いらんと言っておるではないか!独占禁止法違反じゃないのか?!などと煩悶しつつ、ショップ店員の有無を言わさぬスマイルと、長々と続く説明に疲れ、無言でサインしました。
ようやく契約処理から解放されたのは2時間後・・・。もはや疲労の極致です。正直、後半はなんの話をしているのかよく聞いていませんでした。おまけに家に帰っていざ使ってみようとすると使い方がさっぱり分からない。以前はもらえた分厚い説明書もない(注:弁護士だから説明書を読むのは別に苦ではない)。
突然釣り上げられたフグなみにふくれていると、子どもが「わあースマホだー!お母さんスマホにしたんだね!!」と嬉しそうに言うので、「いや、やっぱりやめだ!全然使い方が分からないから解約する!!」となかば八つ当たり気味に宣言しました。
すると子どもが「それならこのヒツジに聞けばいいんだよ~。ほら~!」と、なにやら画面上を歩き回る燕尾服を着たヒツジらしきものに向かって「スマホの使い方を教えて!」と言うと、そのヒツジらしきものが「はい、説明書を開きましょうか?」などと返事をしてくるではありませんか。
驚いて「なぜ使い方を知っている?!」と子どもに聞くと「そんなの当り前だよ~!キャッキャッ」と得意満面でした。
生まれた時から一緒にいたはずの子どもは、いつのまにか深海魚になっていた・・・。
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インターネットで世界はどんどん狭くなる。そして深くなる。
わたしは海深くまで潜れずに、海面にぷかぷか浮かんで生きているのです。
2016/06/10