【事例】
A社担当者は営業の結果、新規取引先C社を獲得した。
C社では、取引開始時に取引基本契約書を作ることにしているとのことで、A社にも契約書が送られてきた。
【顧問弁護士なし】
A社担当者は送られてきた契約書を読んでみたところ、よく分からなかったので、ネットで同種の契約書雛形を探してみました。するといくつか同じような契約書が見つかり、どれも今回送られてきた契約書の文面とさほど違いがないように見えました。
そこで自分なりに調べた内容を報告書にまとめ、上司の決裁を仰ぎました。
その後A社では、部長、社長が、それぞれ3日かけて契約書をチェックしたものの問題点は見当たらなかったこと、C社は比較的大きな会社であり、今後の売上も期待できると判断されたことから、契約書にサインをして取引を開始しました。
取引開始後のある日、C社から、A社が納品した商品が、検品前に落雷による火災で焼失した、再度納品しなければ代金の支払いは拒絶するとの連絡が入りました。
驚いた社長が説明を求めると、取引基本契約書には検品前の商品の危険負担(損害負担)はA社にあることが定められていると説明されたのです。
【顧問弁護士あり】
A社ではC社から届いた契約書をすぐにFAXで顧問弁護士に送り、チェックを依頼しました。
すると顧問弁護士からすぐに電話があり、納品後も検品まではA社が危険を負担しなければならないことになっていると指摘がありました。
また、A社の納品遅延には違約金が定められているのに、C社の支払遅延には遅延損害金の定めがないこと、エンドユーザーからのクレーム対応に要する費用についてA社に負担を負わせる内容になっていることなど、不利な点をいくつか指摘されました。
顧問弁護士からは、口頭での説明とは別に、A社に有利な契約条件の文案が別途メールで届いたことから、A社はこれをたたき台としてC社と交渉を行い、危険負担については納品と同時にC社に移転することになりました。
後日C社の倉庫が火災により焼失しました。
契約書の定めに従い、A社は無事、代金全額を支払ってもらうことが出来ましたが、A社はC社の苦境に配慮し、同じ商品を割安で再度納品しました。その結果、A社とC社の間には強い信頼関係が築かれました。
【コメント】
取引先作成の契約書は、まずは自社に有利な契約条件になっていることが珍しくはありません。
拒否されなければそのまま自社に有利な条件で契約できますから、指摘されてから変更すればよいというわけです。
取引先の思惑に気づかず、相手に有利な条件でそのまま契約したのでは侮られますし、その後の契約でも不利な条件を押し付けられるようになります。
顧問弁護士に契約書案をチェックさせ、フェアな取引を要求すれば、取引先に侮られることもなくなり、対等な取引関係を築くことができます。
また、契約書チェックに要する時間と労力も大幅に削減することができるでしょう。