離婚の際には,子どもとの面接交渉がよく大きな問題となります。
私は原則論として,面接交渉は早い段階から,積極的に行うべきだと思います。子どものために。
これに対して妻側の問題意識と,私の考えを少し書いてみます。
①離婚する夫は最悪なヤツなので子どものために会わせたくない。
この気持ちはよく分かります。
でも,妻にとって離婚する夫は赤の他人ですが,子どもにとっては親に変わりがありません。
どんな父親であろうとも,自分の半身です。
人間は誰でも醜い部分を持っているものですが,それも含めて受け入れてもらえなければ子ども
は自分を肯定できません。
大好きな,そして唯一の保護者である母親が,自分の半分を否定しているという事実は,子ども
の心を深く傷つけるだろうと思います。
②せっかく夫との別居生活にも慣れて子どもが安定してきているのに,動揺させたくない。
これもお母さんの気持としてはよく分かります。
別居して,両親のけんかがなくなって,子どもの笑顔が増えてきたんですよね。
でも「両親のいる家庭を失った人生」がその子の人生です。
それをなかったことにはできません。
むしろ「お父さんがいない生活」に安定してしまう前に,面接交渉を始めるべきです。
離婚は,子どもにとっては,自分の半分を失ってしまうかもしれない出来事です。
そうじゃないよ,離婚してもお父さんはあなたのお父さんだよ,あなたは何も失くしたりしない
し,あなたの中のお父さんを含めて,お母さんはあなたを受け入れるよ,というメッセージを
確かに,強く,子どもに伝える必要があるのです。
③離婚する夫は最悪なヤツなので自分が会いたくない。
これはあまり共感できません。気持としてはその通りでしょうが,親である以上は,親の責任が
あります。
どちらの責任であるにせよ,子どもとは関係のない事情で離婚することになった以上,子どもの
損害が少しでも少なくなるよう,両親はできるだけのことをする義務があると思います。
④養育費をきちんと支払うかどうか見届けてから会わせたい。
そうですね。確かに養育費も支払わない元夫に父親ヅラをされたくない。
ですが,面接交渉と養育費はてんびんにかかっているわけではありません。
甲斐性ない父親でも,子どもの心の成長に貢献できる場合だってもちろんあるでしょう。
それに面接交渉を積極的にしているケースのほうが養育費の自主的な支払が行われやすいという
データもあります。
要するに,面接交渉を求められたお母さんとしては,自分の気持を考えず,ただお子さんにとって何が一番幸せかを考えてほしいのです。それも短期的にではなく,長期的に。
私たち人間は,自分のルーツを追わずにはいられない生き物です。自我が確立した時期のお子さんならともかく,まだこれから,「自分ってなんなんだろう」という疑問に向き合っていかなければならない幼いお子さんから,「かわいそうだから」という安易な理由だけで父親の存在を取り上げないでほしいのです。
大丈夫。お子さんはもしかすると動揺し,つらい思いもし,不安になり,悩むかもしれませんが,お母さんの確かな愛情があればいつかはそこから抜け出し,きっとただ平穏なだけの家庭に育った場合よりも,もっと優しい,人の痛みのわかる,強い人間になってくれると思います。
と,評論家にでもなったみたいに偉そうに書いてみましたが,現実は理想通りではありません。
会わせるべきじゃないだろう!!というほかないお父さんも(けっこう)いますし,いろいろ事情があって会わせようがない場合もあります。
でも私は,いつも最初は「面接交渉,やってみませんか」とお母さんと相談してみることにしています。
2012/07/13
※コンテンツ内で事例をご紹介する場合、作成当時の法律に基づきますので最新の判例と異なる可能性があります
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