交通事故で鞭打ちになった,手足にしびれがある,背中が痛む,などのご相談はよくあります。
このような神経症状も後遺症と認められるのでしょうか。
答えは,「認められるときもあるし,認められないときもある」です。
(そりゃそうだろ,という声が聞こえました)
局部の神経症状については,後遺障害等級の12級か14級に該当する可能性があります。
12級と認められるのは「神経系統の障害が他覚的に証明される場合」とされ,要するにレントゲンとか,CTとか,MRIの検査結果により,異常所見が得られるケースです。
14級と認められるのは,「神経系統の障害の存在が医学的に説明可能な場合」とされ,要するに異常所見はないけれど現在の症状が事故により体に生じた異常によって発生していると説明可能なケースです。
つまり,検査の結果特に異常がなく,しかもなぜ痛いのかについてお医者さんにもよく分からないケースでは,後遺症の認定は下りないということになります。
そんなこと言ったって事故前は何ともなかったのに,事故にあってから痛くなったんだから事故のせいに決まってるでしょ。と言いたいのですが,痛みというものは本人にしか分からず,痛くもないのに痛い痛いと騒ぐ不逞の輩も少なからぬ世の中では,何らかの医学的証明がなければ後遺症の認定はされないのです。
また大変残念なことに,日本医師会と日本弁護士連合会は特に仲が良いわけでもないため,医師と弁護士との間で認識の共通化がなされておらず,弁護士がやってほしいと思う検査を,事故直後に診察したお医者さんがやっておられないことがままあります。
事故から時間がたってから痛みが起きることも珍しくないのですが,患者が痛いとも言わないうちに精密検査をするお医者さんはおられません。後になって検査しても,その結果が事故のせいなのかどうか,よく分からないということになってしまいます。
では日々2000件もの交通事故が発生する日本国において生活する我々は,どのようにわが身を守ればよいのでしょうか。
無用に出歩かない・上下前後左右に細心の注意を払って行動するなどの不断の努力にもかかわらず,不幸にも交通事故にあってしまったら,意識を失う前に救急隊員の腕にすがり,
「頭も痛いし首も痛いし,こ・腰も痛い・・・。レントゲンと・・・し・CTと・・・MRIと・・・できたら脳波検査と筋電図検査もお願いします・・・」
と伝えてから意識を失うように心がけましょう。
そしてさらに不幸にも神経症状が出てしまった場合には,お医者さんに,「他覚的所見はあるのか」「ないなら,医学的に説明可能な痛みかどうか」をお尋ねになり,その内容を診断書に記載して頂くようにお願いする必要があります。
うーん前半は現実的には難しいですね。「交通事故の場合には最低限これだけの検査は行う」というマニュアル化がなされると安心なのですが。
それより車の安全性がもっと高まるといいですね。車の性能上時速60キロくらいまでしか出ないようにするとか,車をマシュマロ状の材料で作るとか(速度を出さなくていいなら可能では?問題は雨で溶けないようにすることですね),進行方向の信号が黄色になったら自動的にブレーキがかかるなんてどうでしょう?
2012/09/06