相続人の一人が被相続人の生前に預金を引き出していたために争われるケースはよくあります。
このようなケースは法律上どのように処理されるのでしょうか。
被相続人が預金の引き出しを了解し,引き出した相続人にあげたのであれば贈与です。
生前の贈与は特別受益(遺産の前渡し)に当たる場合がありますので,遺産分割にあたって特別受益があるかないかを争うことになります。
一方,被相続人が知らないうちに勝手に引き出して持ち去ったのなら,横領(不法行為)です。
被相続人は生前,勝手に預金を引き出した相続人に対し,引き出した預金を返せと請求する権利(損害賠償請求・不当利得返還請求)を持っていたことになりますから,相続人はこの債権を相続することになり,相続債権に基づいて引き出した預金を返すよう請求することができます。
ただし,これは遺産分割の手続とは別の手続(民事裁判)になります。
最高裁は相続債権は遺産分割によらなくとも相続分に従って当然に分割され,遺産分割は必要ないと判断しているからです。
以上からすると,預金の引き出しがあったと考えられる場合次のことを検討する必要があります。
①相続人の一人が預金を引き出したと立証できるかどうか。
②引き出された預金を相続人の一人が持ち去ったと立証できるかどうか。
相続人の一人が預金通帳を管理していたとしても,間違いなくその相続人が預金を引き出したとは言い切れません。被相続人がお元気なら,自分で引出しに行ったかもしれません。
また相続人の一人が預金を引き出したとしても,「被相続人に渡したので知らない。このとおり領収書がある。」と言うかもしれません。
そんなわけないだろう!!と思うでしょうが,あくまで可能性があるという話です。
可能性がある以上横領の事実が立証できたとは言えませんので,十分な証拠集めが必要です。
2012/09/18
※コンテンツ内で事例をご紹介する場合、作成当時の法律に基づきますので最新の判例と異なる可能性があります
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